田舎の梅農家 プラムハウスふなやま
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第5章 プラムハウスふなやま

前章まで南部川村(現代のみなべ町)の歴史と現代の取り組みをざっと説明させていただきました。このような苦労と努力の歴史がある「南高梅」を扱う立場としては、やはり手作りにこだわるというのは当然の義務だと私は考えます。梅の木を植えて「接ぎ木」をしてから、大きく育ち収穫できるまでを私達は全て自分達自身の手で行っています。そうやって収穫した梅の実を、また自分達の手で漬け込みして梅干しにします。つまり、苗作りから収穫、土用干しまでを全て自分達の手で行った白干梅(しらぼしうめ)が私達の商品の原点です。この「白干梅」を減塩し調味料やシソを加えて作る梅干しが「味梅」「シソ梅」「かつお梅」です。私達は「白干梅」の品質には絶対の自信を持っていますが、この品質が「味梅」「シソ梅」「かつお梅」を手作業で作らなくてはならない要因の一つとなっています。というのは私達の「白干梅」は皮がとても薄い上に実が柔らかくて、シソの葉やカツオ節と混ぜる時に機械を使うとまず間違いなく皮が破れてぐちゃぐちゃになってしまいます。どんな優秀な機械を使っても、人間の「手」の微妙な加減を再現するのは難しいのではないでしょうか。私は家族と一緒に手作業で梅干しとシソなどをかき混ぜています。ひどく原始的な手法で効率も悪い(大量 生産はほぼ不可能)ですが、それが一番おいしい梅干しを作る方法だと思っております。

手作業にこだわり続けている私ですが、農業をする上でどうしても避けて通れないのが「病気」と「害虫」です。この二つの障害をクリアするために、現代では「農薬」という手段があります。実は私ども船山も「農薬」を使っております。体や自然に対し色々な害があると言われていますが、その真偽は専門家でないと口には出来ません。しかし、私自身が大切に育てている梅にはできるだけ「農薬」を使いたくないというのが本音です。完全な「無農薬」は、まだ達成できませんが「減農薬」を名乗るだけのレベルはクリアしています。また、肥料に関しても化学肥料を使わず、昔ながらの「有機物(つまり動物の糞など)」を使っています。施肥(肥料を撒くことです)の時にはあまりの臭いに卒倒しそうになりますが、これも私の考える手作り農業の一つです。

私の父親は昭和32年に梅の栽培を始めました。当時は自転車の後ろに梅の苗をくくりつけ、片道約15kmの道のりを十数回に分けて運んだと言います。南部高校の竹中勝太郎先生に栽培方法の指導を頂き、本格的に梅干しを作り始めたのが昭和40年です。そんな私の父を含め、南高梅と南部川村(現代のみなべ町)の歴史は手作業で創られてきた歴史だと思います。この手作業の歴史に習い、これからも「手作り」にこだわりを持ち、おいしい梅干しを作り続けていきます。
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